無駄な深読み

ついったーに書ききれないことを書く、かも知れない

『すずめの戸締まり』を見て

こんにちは。グゥです。

 

11/11公開の映画、『すずめの戸締まり』を見てきました。

 

とりあえず感想を書き留めておきたいのでブログを開きました。

ネタバレを多分に含むので、まだ見てない方はブラウザバック推奨です。もう見た、ネタバレ上等という方はお進みください。

ここから先の話はきっちり裏取りをしたわけでもなんでもなく私が頭に浮かんだことをつらつらと書くだけなので、あくまでそんな考え方もあるんだな、くらいに思っておいて下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それではまず。

 

今回の『すずめの戸締まり』大きなテーマは震災でした。2011年3月11日に起きた、東日本大震災で親を亡くした高校生すずめが主人公です。

 

このテーマは非常にデリケートなテーマです。劇中では頻繁に緊急地震速報が鳴り、地震の描写もあります。私は実際に震災を現地で経験したわけではありませんが、大きな地震を経験したことがある人が見れば耐え難いかもしれないシーンもあったと思います。

 

今回、震災がテーマにあるのは、震災を忘れない、というメッセージなのだと思います。

物語の序盤で小さな地震が起きた時、地震のアラートが鳴っているのにも関わらず、作中の人物たちは誰一人として避難行動をとろうとはしませんでした。震災で家族を失っている(当時4歳であまり記憶にないのかもしれませんが)すずめでさえ教室の椅子に座ったまま机の下に隠れようともしません。

 

劇中は2023年で来年なのですが、震災から12年経っており、人々は記録として東日本大震災を知ってはいるが、記憶としてはもう彼等の中にはないように描かれています。実際、現実で地震が起きてアラートが鳴ったとして、避難行動をきちんととる人ばかりかというと、やはり劇中のようにほとんどの人は何もしないのではないかと思います。

 

劇中では忘れられてしまった廃墟の扉からミミズ(と呼ばれる厄災の元凶のようなもの)が出てきて地震を起こします。

震災のことを忘れてしまって災害に対する備えをしなくなれば、また同じことが繰り返されてしまう、だからたとえ辛い記憶だったとしても、きちんと覚えておかなければならないというメッセージが込められています。

 

 

次に単純な感想です。

東日本大震災の話がバックグラウンドにあること、伏線は散々張られていたのに3.11のワードが出るまで全然意識に上がってこなかったの、私の中でも記憶から薄れてしまっていたんだなと感じました。

幼いすずめが雪の中を歩くシーンでも、家の屋根だけが地面にある描写を見て「廃墟って言ってもそんなふうに家が崩れるまの普通ないし、大袈裟な表現だな」って思ってました。でも震災直後の被災地なら納得の描写でした。

 

草太のセリフで、「閉じ師は大事な役割だけど人に気づかれない方がいい(詳細は覚えてない)」って感じのセリフがあります。別にこれは閉じ師に限った話ではなくて、日常の裏には色んな困った出来事が起きているんだけど、人知れずそれを解決してくれてる人が世の中には沢山いるって言ってるようで、好きなセリフです。

 

この映画1番驚いたポイントなのですが、草太が大学生だったところ。20代後半くらいかと思ってました…。それだけ苦労してきたってことかもしれません。

多分すずめも同じ感想で驚いてたのかな?と思いますが明言はしてないのでわかりません。

 

最後すずめは自分が要石になるつもりで常世に向かい、結果としてダイジンが草太の代わりの要石になりました。ハッピーエンドではあるけれど、すずめのことをずっと慕っていて何度も身を挺して守ってくれたダイジンがちょっと可哀想です。すずめは、草太とダイジンのどちらを要石にするか、という選択でダイジンを選んだとも言えますね。

 

すずめが幼い時のすずめと会うシーンでは、明日のすずめがいると元気づけるわけですが、他者ではなく未来の自分がいるということを根拠にできるの、先が不安で仕方がない時、本当に心強いですね。私も10年後、20年後の自分がのうのうと生きていることを信じて頑張って生きていきたくなります。

 

そして最後に後ろ戸を閉めて、行ってきますと言う。過去に対してちゃんと向き合った上で区切りをつけて、前に進んで行こうというすずめの思いが感じられていいシーンですね。

 

 

さて、作品のメッセージ、私の感想と触れてきましたが、逆にこの作品では触れられてないことが多くあると私は感じました。

次はそれを一つずつ見ていきましょう。今回はあくまで一回見た後に急ぎ書いているので、もしかしたら作中で語られていたり、全く根拠のない推論をとりあえずメモ代わりに書いたりしますがご了承ください。

 

  • 要石とは何か

この作品の一つの軸である要石とはなんなのか。劇中ではミミズを封印するものくらいにしか語られませんでした。

要石に関する私の疑問は、大きく次の二つです。

 

  1. すずめは何故要石を引き抜くことが出来たのか。

  2. 要石の役割とは何なのか。

 

一つ目、物語の終盤で、すずめは要石になってしまった草太を助けるために、自分が以前くぐった後ろ戸を探します。要石となった草太が常世にいるが、通常の後ろ戸からは常世に向かえないためです。しかし、物語序盤ではすずめは自分が過去にくぐった後ろ戸とは別の後ろ戸を通った後、要石を引き抜いています。

考えられる可能性としては、そもそも要石が元々現世にあったことですが、特に確証があるわけではありません。すずめが何度も後ろ戸をくぐっていたことと関係があるかもしれません。

 

次に、要石の役割です。

椅子になった草太がダイジンを捕まえようとした時に、ダイジンは要石の役割は草太に移したと言います。その言葉どおり、草太は要石としてミミズを一度封印するのですが、終盤では再びダイジンがミミズを封印します。

これは一度草太に移った役割をダイジンに戻したのか、それとも役割を移したというのが嘘で、本当はある一定の条件を満たせば誰でも(何でも)要石になれるのか、あたりの可能性が思い付きます。すずめが要石になろうとしていたあたりから、後者の方があり得そうです。

 

  • ダイジンとサダイジン

東の要石のサダイジンと、西の要石のダイジン。まず疑問なのが、人間がSNS上で付けたあだ名のダイジンに対して、東の要石の化身?である黒猫がサダイジン(左大臣)と名乗っている点です。あくまで勝手にダイジンと呼んでいるだけなのに、それに対応するように名乗っているのです。

そしてサダイジン(左大臣)と言うならば、対になるウダイジン(右大臣)がいても良さそうですが、劇中では最後まで出てきませんでした。サダイジンが大きな黒猫ならウダイジンは大きな白猫だと思われますが、ダイジンはサダイジンと大きさが違いすぎて対になってる感じはしません。

 

  • 椅子の欠けた脚

すずめが母から誕生日プレゼントで貰い、草太の魂が入った椅子です。この脚は作られた時点ではキチンと4本ありますが、すずめが幼い時に常世から戻ってきた時点で既に3本になってしまっています。では残り1本はどこにいってしまったのでしょうか。

 

結論から言うと、この1本はダイジンなのではないかと思います。

幼いすずめが常世から戻ってきた際に持っていた椅子は現在のすずめから渡されたものであり、その幼いすずめが現在のすずめに成長するまでずっと椅子を持っており、現在で草太が椅子に入り要石になり解放されまた幼いすずめに椅子を渡す、と考えると、同じ椅子がずっとすずめに渡され続けて始まりも終わりも無くなってしまいます。正直この部分は上手く説明がつかないので、とりあえず椅子の脚1本は常世にどこかのタイミングで置いてきてしまったことにします。

 

劇中で語られていますが、常世とは全ての時間が重なる場所です。だからこそ幼いすずめと現在のすずめが出会えたわけですが、つまり置き忘れた脚は現在にも過去にも未来にもあったと言えるわけです。それを過去の閉じ師が要石として使った、という推論です。材質は分かりませんが、石が猫になれるくらいなら、石と木の違いくらいなんとでもなりませんか……?

 

こう考えると、ダイジンの好感度がすずめに対して最初から高かったのは、すずめゆかりの品だったということで説明が付きます。

また、ダイジンとサダイジンの体格差ですが、椅子そのものが要石として使われていればダイジンはサダイジンと同じくらいの体格だったが、椅子の脚1本だった為子猫のサイズになってしまった、とも考えることができそうです。

 

まあ辻褄がちょっと合うだけで根拠は全然ないんですけど。

 

  • 宗像草太とは何者か

すずめの過去については劇中でかなり触れられているのですが、草太の過去についてはほとんど触れられていません。

草太について考えるポイントは、「お爺さんは育ての親である」と発言している点です。これは「親がいないから実の祖母に育てられた」か、「両親がいなくなった草太が、全く血縁のないお爺さんの養子として育ててもらった」かどちらかで捉えることができます。

 

個人的には草太が東京でアパート暮らし(お爺さんと元々住んでいた家はない)点から後者ではないかと思っています(単に描写されていないだけかもしれませんが)。

 

そうすると「代々閉じ師をやっている」というのが血縁の話ではなくあくまで技術的な継承の話になってきます。

 

ここからは私の妄想ですが、幼い頃に草太は震災で親を亡くし、その時に地震の原因のミミズが見えることがわかり、閉じ師であるお爺さんに引き取られたのではないでしょうか。ちなみにお爺さんと血縁があってもこの話は成立します。

 

また、東の要石の時に100年前の東京の地震(おそらく1923年の東京大震災)の話は出ていますが、肝心の2011年の関東大震災がミミズの影響だったかは一言も語られていません。いませんが、作中では地震はほぼミミズと結び付けられているため、関東大震災もミミズが起こしたと考えるのが自然です。

 

お爺さんが閉じ師として食い止めようとしたが失敗して怪我を負い、草太が両親を亡くし閉じ師になることを決めたのも関東大震災なのではないでしょうか。

 

 

  • 「お返しします」「お返し申す」

扉を鍵で閉める時のセリフです。このセリフ、扉を閉めるときは必ず言っているのですが、いまいち意味が飲み込めていません。

「(厄災であるミミズを現世から常世に)お返しします」って意味かなと思ってはいるのですが、実際にはミミズが現世にいる状態で無理やり後ろ戸を閉めているのであんまりお返しはしてないのでは…?と思ってしまいます。

 

神様のいる死後の世界の常世に、人間のいる現世から何かを返す、というところまでは合ってると思うのですが、イマイチ最後のピースがはまらない感じがします。

 

 

 

 

『すずめの戸締まり』を見て考えたことをつらつらと書いてきましたがネタもここまでのようです。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。